【女の事件】とし子の悲劇・３～翼をなくした白鳥

第６話

奥さまたちが着替えをしているところを不審な男にスマホで隠し撮りされた上に、動画投稿サイトに公開されて、被害を受けた事件が原因で、アタシはご近所付き合いがおっくうになった。

あきとさんは、ノゾキ魔のぬれぎぬを着せられた。

それが原因で、自分の仕事にほこりが持てなくなった。

あきとさんが勤務している…いいえ、やめかけている会社は、７月に支給される分から従業員さんたちのお給料が大きく下がることが決まったので、工場の従業員さんたちは欠勤したり早退する人たちが多くなった。

工場の機能は、マヒ状態におちいた。

６月27日の朝９時頃のことであった。

場所は、あきとさんが勤務…いえ、やめかけている工場にて…

朝の朝礼の時、社長さんは従業員さんたちの前で泣きそうな声で７月分に支給されるお給料が減ることを改めて説明したが、従業員さんたちの耳には社長さんの声は届いていない。

「もう、お話は分かっていると想いますが…今年の夏は天候不順が続くので、大手のビール会社さまからの委託が大きく減ることが予想されるために、７月の支給分からお給料が大きく減ることになりました…みんなが一生懸命になってがんばって働いているのに、お給料をあげるどころか手当ても出すことができない…みんなにもうしわけなく思っている…委託先の会社の売り上げが回復したらお給料をあげます…どうか、許してください…この通りです…」

社長さんは、従業員さんたちの前で土下座をしてあやまった。

従業員さんたちは、白けた目付きで社長さんをにらみつけた。

現場責任者の長身の男性は、従業員さんたちに社長さんの気持ちをわかってほしいとさとした。

「いきどおる気持ちは分かるけれど、社長さんは従業員さんたちに心のそこからおわびをしているのだよ…社長さんは、みなさんのお給料を守ることで手がいっぱいになっているのだよ…大手のビール会社からお仕事を与えられているだけでもありがたいと思って働けばいいじゃないか…売り上げが回復すればお給料はまた上がるから、いつも通りにがんばって働いて行きましょう。」

現場責任者の長身の男性の声も、従業員さんたちの耳には届いていなかった。

従業員さんたちは、朝礼が終わった後に終わった後『よろしくお願いします…』とあいさつして、それぞれの持ち場についた。

社長さんは、朝礼が終わった後、さみしい表情をしながら小さなカバンを持って、外に出かけた。

社長さんは、札幌市内の信用金庫に行って融資の申し込みをしたが、融資を断られてばかりいた。

社長さんは、ひとりぼっちで白い時計台の近くにあるベンチにこしかけて、頭を抱え込んでいた。

あきとさんがやめかけている会社は、社長さんの奥さま方の家のお父さまから開業資金を借り入れて開業した工場で、大手のビール会社からの委託業務で支えてきた会社である。

2024年の夏は天候不順の日が続くと言う予報が出た。

ビールの売り上げが大きく落ち込むことが予想されると聞いた。

そんな中で、従業員さんたちの生活をどのようにして守ればよいのか…

奥さま方の家のお父さまに頭を下げて追加の借り入れをしようか…

それとも、もう一度信用金庫に融資の申し込みに行こうか…

工場の従業員さんたちは、全員未婚で好きな恋人がいない…

結婚したくても、お嫁さんを十分に養える金額が支給できない…

この先…

どうすればよいのか…

従業員さんたちの今後ことを…

何とかしないと…

社長さんは、大通公園をトボトボ歩きながら路頭に迷っていた。