バイオレット・ダークルーラー



「…え、」

「………。」



自分で言っておきながら、御堂くんは遠慮がちにわたしを見る。

……この人、全然ポーカーフェイスなんかじゃない。優等生の御堂くんを作り上げることに力を注いでいるからか、仮にこれが素の彼だとしたらむしろ分かりやすいくらいだ。



「どこに住んでいようが、御堂くんは御堂くんでしょう」

「っ!」

「本当の御堂くんの性格がつかめないし、訳分かんなくなったけど。わたしが会いたい人の情報を集めているから御堂くんも麗蘭街の住人でいてほしいなんて、そんなこと思わないよ」

「………」

「たとえば学校で優等生でいるのだって何か理由があるんでしょう。それを掘り下げようとは思わない。本当はどんな性格だとしても、わたしには今まで見てきた御堂くんがすべてだもの」

「………」

「つまり何が言いたいって、自分でもうまく言えないんだけど…。あ、わたしは優等生の御堂くんより今の御堂くんの方が、人間らしくて好きだよ」



…彼の目から不安を感じ取った。

咄嗟の言葉で、伝えたいことがきちんと伝わったか定かではないのだけど。



――…今までの自分への戒めだった。肝心なところを濁す麗蘭街の人たちに、知りたい知りたいと迫ってしまっているけれど

そもそもわたしは麗蘭街の人間ではない。だから、知らなくていいことしかないのだ。


部外者なら、部外者らしく、一線を引きながら生きていかないと

麗蘭街には行けても紫月さんに会えない。…そんな気がしたから。

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