バイオレット・ダークルーラー



「あ!シイ!やっと抜け出せたの?」

「…こんなに大変だとは思わなかった」

「アハハ、支配人様は顔が広いからねぇ。それじゃあボク戻るネ!」

「あっ、ありがとうマッシュ!」



目の前にやって来るなりわたしの肩に顔をうずめた彼は、相当疲れているんだと思う。

見かねたマッシュが心底楽しそうな表情をして戻っていった。…なんか申し訳ない。



「…紫月、おつかれさま」

「ん…。帰ったら抱く」

「…わたし栄養ドリンクじゃないんですけど」

「俺にとっては栄養ドリンクだっつの」

「…真顔で言わないでもらっていいですか」



――…支配人が亡くなった日から、わたしはずっと紫月の傍に居た。


無言で涙を流し続ける彼をずっと抱きしめて

…弱々しく抱きしめ返されたとき、一緒に泣いた。



「…そろそろ学校、戻る」

「うん。単位足りなくて絶対留年だと思うけど」

「佑介と壱也と、夏休みに集中授業やってもらうことにした」

「……抜かりなさすぎる」

「褒め言葉だな」



一歩、また一歩

彼は自分の足で進んでいるのだと思う。

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