バイオレット・ダークルーラー
◇
「……ん…、」
――…意識をはっきり持った時、わたしはふかふかの毛布をかけられてベッド上にいた。
そこで眠っていたのだと初めて気付き、飛び起きてあたりを見回す。
自分の部屋じゃない。まだ外は真っ暗。
…そうだわたし、紫月さんに出会ってここに来て、それから…。
「あれ…?」
その紫月さんが…どこにもいない。
時計の秒針もなく音がしないこの室内は、独りでいるのは怖さを感じるくらいで。
ぶかぶかで上質な生地の部屋着から、とんでもなく良い匂いがする。
吸い寄せられるようにベッドから降り、リビングへ足を進めた。
――…抱かれていた時の記憶が、途中から全くない。
…どれくらい抱かれていたのか。どんな風に終わったのか。覚えていない。
……彼の想うことには、願いには、きちんと届いたのだろうか。
「紫月さん…っ、」
デジタル時計が示す、明け方の4時になるところ。
…彼が言っていた朝5時まであと1時間だ。
「わっ、」