バイオレット・ダークルーラー







「……ん…、」



――…意識をはっきり持った時、わたしはふかふかの毛布をかけられてベッド上にいた。

そこで眠っていたのだと初めて気付き、飛び起きてあたりを見回す。


自分の部屋じゃない。まだ外は真っ暗。

…そうだわたし、紫月さんに出会ってここに来て、それから…。



「あれ…?」



その紫月さんが…どこにもいない。

時計の秒針もなく音がしないこの室内は、独りでいるのは怖さを感じるくらいで。


ぶかぶかで上質な生地の部屋着から、とんでもなく良い匂いがする。

吸い寄せられるようにベッドから降り、リビングへ足を進めた。



――…抱かれていた時の記憶が、途中から全くない。


…どれくらい抱かれていたのか。どんな風に終わったのか。覚えていない。

……彼の想うことには、願いには、きちんと届いたのだろうか。



「紫月さん…っ、」



デジタル時計が示す、明け方の4時になるところ。

…彼が言っていた朝5時まであと1時間だ。



「わっ、」

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