イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
パシッ──
不意に、手を掴まれる。
「ねぇ、結衣ちゃん。さっきの嘘だよね?」
向葵くんの切羽詰った声がする。
私の耳につんざくように入り込む。
その声を聞いて、その傷ついた顔を見て、私は、泣きたくなった。
空から落ちてくる雨粒は、次第に大きくなり、私たちのシャツにしみをつくっていく。
私は、大きく息を吸って空気を取り込んだあと──…
「……ほんと、だよ。」
私は、嘘を、呟いた。
そして、また向葵くんを傷つけた。
「私…好きな人いるの……好きな人ができたの……」
そんなはずなかった。
でも、向葵くんを振り切るためにはこれしかないと思ったの。