イケメン男子と疑似恋愛⁉︎


パシッ──

不意に、手を掴まれる。


「ねぇ、結衣ちゃん。さっきの嘘だよね?」


向葵くんの切羽詰った声がする。

私の耳につんざくように入り込む。

その声を聞いて、その傷ついた顔を見て、私は、泣きたくなった。

空から落ちてくる雨粒は、次第に大きくなり、私たちのシャツにしみをつくっていく。

私は、大きく息を吸って空気を取り込んだあと──…


「……ほんと、だよ。」


私は、嘘を、呟いた。

そして、また向葵くんを傷つけた。


「私…好きな人いるの……好きな人ができたの……」


そんなはずなかった。

でも、向葵くんを振り切るためにはこれしかないと思ったの。

< 243 / 335 >

この作品をシェア

pagetop