イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
私の真っ赤になった顔を見た向葵くんは、クスクスと笑ったあと髪から手を離す。
「それより康太はどうしたの?」
「ああ、ただの忘れ物」
自分の席へ向かうと、机の中から何かを取り出してかばんの中へ乱暴に詰め込んだ。
そして立ち上がると、また私たちの方へ歩いて来る佐野くん。
「しっかし、恋愛初心者の二人がくっつくとはねぇ」
ニヤニヤと笑う佐野くん。
……あっ、なんか意地悪な顔してる。
「向葵が日坂さんにそんな話を持ちかけたことにも驚いたけど、二人がその気持ちに気づいたってことにも驚きだな」
「あー、うん。確かにそうだね」
「向葵恋愛とかそういうのには、かなり鈍いけど、それ以上に日坂さんの方がやばかった」
えっ、私?
キョトンを首を傾げながら佐野くんの言葉を聞く。
「日坂さんが気づく前に俺が気づいてどうすんのって話だけどな」