こんな溺愛、きいてない!
その夜、
遅い時間に鈴之助が帰ってきた。


「凛花、もう風呂あがった?」


「うん、終わったよ。もう寝るところ。
鈴之助も、ゆっくりお風呂入って
疲れとるといいよ」


「あれ? 凛花、それ」


「ん??」
 

鈴之助が一点を見つめたまま
固まっている。


「まさか、相手は遥さん?」


「なんの相手?」


ムッとしている鈴之助に
首をかしげる。


急に怖い顔して
どうしたんだろう?


「つきあってんの?」


「だれが?」


「つうかさ、
こういうことじゃないよな」


急に強い口調で
声を荒げた鈴之助に
びくりと体を揺らす。


「鈴之助、急に、ど、どうしたの?
あ、セリフの練習?」


と言ったところで
ドンっと壁に押し付けられて、

視線を尖らせた鈴之助の両手に
閉じ込められた。


えっ?


どうして?


息を止めて、
目を見開いていると、

鈴之助が、私の首筋を指で刺す。


「この、凛花の首筋についてる
キスマークのこと」


キスマーク? ってなんだろう?


「だから、首筋についてる、
ソレのこと」


「首筋?」


「凛花、気づいてないの?
どんな状況だよ、それって。

とにかく、常識的に考えて、
見えないように隠しておいた方がいい。

叔父さんや、
叔母さんたちにもばれないように。

ちょっと俺から遥さんに注意しとく」


それだけ言い残して
イライラとした様子で
バンっと強くドアを閉めると

鈴之助は部屋に篭ってしまった。


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