こんな溺愛、きいてない!
「遥先輩、そろそろ
自分の教室に帰った方が…」


すっとした高い鼻筋に
黒い瞳を潤ませて、

遥先輩が私の机のうえに
陣取っている。


「まだ凛花に、
おはようのキス
してもらってないから、無理っぽい」


「バカなこと言ってないで
さっさと自分の教室に帰れ!」


すると、甘く笑った遥先輩が
ぐぐっと顔を寄せる。


「そういえば、
お前のところの鈴之助、
今度は映画で……」


「わかった、わかったから! 
黙って目つぶって!

……って、
言うと思うか!」


「もういいじゃん、
何度もしてるんだし。
あきらめが肝心♪」


ガシッと
遥先輩に捕獲されて

遥先輩の綺麗な顔が
目の前にせまる。


「ちょ、ちょっと待って!
ここ、どこだと思ってるの⁈」


と、遥先輩を突き飛ばした勢いで、
眼鏡がとんだ。


あ……


眼鏡に度は入ってないから、
困らないんだけど、

静まり返る教室に首をかしげる。


「り、凛花?」


「えーーーっ!!」


とたんに
ぎゅっと遥先輩に拘束されて。


く、く、苦しいってば!


窒息死っ!


「ばか凛花! 
なに眼鏡とばしてんだよっ」


「眼鏡、とばしたのは遥先輩でしょ! 
それよりも、
苦しすぎて、三途の川、
渡っちゃうところだった!」


「つうか、そんな顔、
他の奴に見せんなよっ!」


は?

どんな顔?  

そんなに間抜けな顔、してますか?


「お前ら、ダメだからな!
こいつは俺のだからな!
絶対、ダメだからなっ!」


遥先輩に捕獲されたまま、
教室から連れ出された。


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