こんな溺愛、きいてない!

そして、鈴之助。

その日の夜遅くに
鈴之助は帰ってきた。


「ただいま」


派手な色のスニーカーを

ポン、ポンと
玄関に脱ぎ捨てている鈴之助に

くるりと背中を向ける。


なんだか、鈴之助の顔を
まともに見ることができない。


「あ、おか、おか、おかえり」


背中を向けて、声をかけると。


「凛花、緊張しすぎ。
意識してんのバレバレ」


「す、鈴之助が
変なこと言うからでしょっ!」


振り返り、
じっと鈴之助のことを見つめると

トンっと、
廊下の壁を背に

鈴之助の両手に挟まれた。


うっ、
な、なんだろ、この体勢。


従妹同士にしては、
少々、不適切な距離感のような……


それに、
金色の前髪の隙間から、
じっと私を見つめる鈴之助の瞳は、

いつもの子犬みたいな可愛いお顔。

……ではなくて。

あの日、
車から眺めた広告と同じ、鋭い瞳。

そう、
男のひとの顔をしていて。


ううっ……

ますます
目が合わせられない!


「あのさ、一緒に暮らしてる男が、
本気で凛花のこと、狙ってるんだから、
もう少し、気を付けたら?」


「き、気をつけるって!」


すると、鈴之助が
表情を変えないまま

私の着ている
パジャマの一番上のボタンを外し、

体をかがめて、
私の肩に唇を落とす。


「……っ!」


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