こんな溺愛、きいてない!
「凛花の手元にあるのは
プライスレスメニューだから。

ゲストに値段を見せるようなことは、
さすがの俺でもしないよ」


軽やかに笑う遥先輩の
自然なふるまいが、より一層恐ろしい。


いつもの口の悪さは
どこへ行ってしまったのか

丁寧な口調に、洗練された仕草、
まるで遥先輩じゃないみたいだ。


そうだ、すっかり忘れてた。

「はるかちゃん」改め、
「遥先輩」は、
お坊ちゃまだったんだ。


うちの隣に
引っ越してきたときにも、

自宅のリフォームやらで
仮の住まいとして
引っ越してきたんだった。


幼稚園まで
いつも黒塗りの外車に
白い手袋したおじさんが

「はるかちゃん」のこと、
迎えにきてたっけ。


あの頃はなにも考えなかったけど、
そういうことなんだっ!

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