こんな溺愛、きいてない!
このビルに入ったときから
おかしいな、とは思ってたんだ。

ファミレスとか
ファーストフードが

こんな高層ビルの65階にあるのかな、
って不思議に思ってたんだ。


でもね、
いくらなんでも、まさかと思うよね。


「遥先輩……
このお店で制服着てるのって、
私たちと、
ウェイターさんだけだね……」


「ああ、ここ、フレンチだから
ギャルソンね」


そんなのどうでもいいよ。

そもそも、ビルの入り口あたりから、
高校生なんて私たちだけだったし!


「ちょっと聞きたいんだけどね?」


「ん、どうぞ」


「どうして高校生の私たちが、
こんなところに入ってるの?」


「え? ここ、うまいよ」


ちらりとメニューを見て固まった。

目が点になるってこのことだ。


「どうした、凛花?」


「どうした、じゃなくて」


なんだか血の気が引いていく。


「好きなもの、頼んでいいよ。
あ、もしわからなかったら、
俺が適当にたのむよ?」 


「……このメニュー、
値段が、のってない」


こんなに恐ろしいメニュー、
見たことない。


こんな「超高級店ですがなにか?」
って空気を濃厚に漂わせているお店で、

値段がのってないメニューを
渡されたところで、

恐ろしすぎて
オーダーなんて出来るはずがない。


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