近くて遠い私たちは。
 ベンチに置いた私の手を、サクの大きな手が包み込んでいた。そのままギュッと手を繋いでくれて、その手に応えて握り返した。

「本当はずっと、美紅だけを抱きたかった。
 でも俺はお前の兄貴だから、表舞台には立てなくても、守ってやらねーとって。ずっとそう思ってたんだよ」

 初めて聞くサクの告白。

 キュッと胸が締め付けられる痛みと、内から湧き上がる歓喜でごちゃ混ぜだ。
 やかましい気持ちに一旦蓋をして、私は強がってみせた。

「そんな事言ったって、所詮は赤の他人じゃん」

「赤の他人って……、そんな身も蓋もない」

「血の繋がりもないじゃん」

「そうだけど……家族だろ?」

 思わず平たいため息をついた。

「家族って言っても、たった紙切れ一枚で家族になっただけの、寄せ集めの関係じゃない」

 そう言って強い意志で見つめ返すと、サクの瞳が僅かに揺らいだ。



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