近くて遠い私たちは。
 3.サクの変貌

「もうサクとか呼ぶな、今日からちゃんと兄貴って呼べ」

 両親の再婚から四年後。サクは人が変わったように冷たくなった。

 当時私は小六、サクは中学二年生。思春期真っ只中のサクは、私との間に幾重もの線を引くようになった。

 それまで何処へ行くのにも、サクの後を付いて回っていたのに、それすらも許されなかった。

「付いて来るなよ、鬱陶しい。お前いい加減友達と遊べよ」

 そう言って嫌そうに顔をしかめたサクは殊更に私を遠ざけた。

 なんで? 私何かした?

 最初は意味が分からなかった。ただ単純に虫の居所が悪いだけだと思い込んでいた。学校で何か嫌な事があって、私に八つ当たりしているだけなんだ、と。

 しかしながらサクの態度は等しく、一向に変わらなかった。

「いつまでもサク、サクって。お前ブラコンかよ」

 言葉遣いも荒くなり、言動の全てで私を拒絶していた。

 そして、それから一年後。サクの乱れた性生活が始まった。

 取っ替え引っ替えに毎回違う女の子を家に連れて来ては、心理的に私を家から追い出した。
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