医者の彼女
よくよく考えれば、想像は出来たはず。
医者の中に1人だけフリーターっていうのも
違和感のある話だ。

興味がなかったし、人数合わせかな
くらいに思って気にしなかった自分も悪い。

…もう少し疑うべきだった…

今更後悔しても後の祭りなんだけど。

和弥「まぁ、せっかく来たんだし。
とりあえず、診察するぞ。」

パソコンを立ち上げながら、いかにも医者っぽい
口調で言うと、椅子ごとぐっと近づいてくる。

医者、白衣、そしてこの匂い。

目の前にいるのはさっきまで一緒に居て、
何ともなかった和弥さんのはずなのに…。

もう何年も病院になんて行ってなくて、
父親とも会ってない。

嫌なことも全部わすれたはずなのに…
思い出される昔の記憶。

「い…嫌‼︎」

思わず身体を庇うようにうずくまり、身体を固くする。

これには和弥さんも驚いた様子。

それもそのはず。いい歳してやってることは小学生
並みの行動。いくら病院が嫌いとはいえ、異常だ。

和弥「…ちょっと落ち着こうか。大丈夫だから。」

背中をさすってくれようとするが、立ち上がる。

「あ、あの…ゴホッゴホッ、取り乱してごめんなさい。
もう大丈夫なので…ヒュー、ゴホッか、帰ります」

一刻も早く出て行きたくて、バックを持ち
部屋を出ようとするが、再び腕を掴まれて
椅子に戻される。

「待てって。お前、自分で熱あるの分かってる⁇
悪いけど、このまま帰せないから。」

私、熱あるの?…確かに火照った感じがする。

冷静になると、目の前にいるのが和弥さんだと
いうことを認識し、ちょっとだけ落ち着きを取り戻す。
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