医者の彼女
和弥「…じゃ、手。」

それからはもう大人しくされるがまま。
手の甲に針を刺し、包帯で固定される。

和弥さんが滴下調整するのを見ていると目があった。

和弥「しばらくこのままな。あんま動かすなよ」

黙ってうなずく。

和弥「3時間くらいかかるから、
寝れるなら寝たほうがいい。」

こんなところで寝れるわけないじゃん、
と頭では思っていたが正直、体力的にも限界だった。

私は目を閉じ、そのまま眠ってしまった。

ー…

どれくらい経っただろう。
目を開けると和弥さんがパソコンの前に座って
本を読んでいた。

整った顔、思わず目を奪われる。


…いや。
冷静に考えれば今の彼は医者。
つまり私の敵。

私が医者を好きになるなんてあり得ない。
ないないない。
しかも嘘つかれてたわけだし。
ほんと…信じられない。

ふと手を見ると点滴はすでに抜かれていた。

「…瀧さん…」

声をかけると気付いて、近づいてきた。

和弥「気分は?」

「おかげさまで…だいぶ良いです。」

身体が軽くなってるのがわかる。
恐るべし点滴の力。

和弥「とりあえずもう一回診察する。」

そう言って聴診され、体温計を渡された。

今度は大人しく自分で挟む。

音が鳴り、取ると 38.3℃ の数字が…

嘘でしょ…と絶句してると、
体温計を見た和弥さんから

「うん、だいぶ下がったな。」

と言われさらに言葉を失う。

これで下がったって、そもそも何度あったの…?
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