医者の彼女

和弥「あ、ご飯食べ終わったら聴診だけするから。」

…そうだった。慣れない雰囲気に忘れかけてたけど、
彼は医者で私は患者としてここにいるんだった。

どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。
本当に医者なのだろうか。

…ずっと。

医者なんて自分のことばっかりで、
他人のことなんて考えてないものだと思ってた。
風邪ひいても診てもらえなくて、怒鳴られて。
自分の親でそうなんだから、ましてや全く他人の
医者だったら、なおのことって思ってたのに…。

…なんで私は今、医者といるんだろう。
理由は簡単。
私が入院できないって言ったから。なんだけど…

どうして和弥さんはこんなめんどくさい
私なんかを気にしてくれるの…?
普通、こういうのはほっとくもんじゃないの?

聞きたいことはたくさんあるけど、
聞くのが怖くて聞けない。
そんな事を考えていると声をかけられる。

和弥「…具合悪くなったか?」

「えっ⁇」

和弥「ぼーっとしてるから。」

「い、いえ、大丈夫です」

笑ってみたけど、多分顔引きつってたと思う。
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