ねえ、知ってる?【上】



「私、大和くんのこと何にもわかってなかった」


「嫌われたくなかったから言いたくなかっただけ。俺が話そうとしてなかったんだから、苗が知らなくて当たり前」


「う・・・・・・」


 優しく笑いかけてくれた。

 
 胸が痛くなる。


 雅暉さんのことを思っている時とは違う痛さだ。


 大和くんの優しさがつらい。


 どうしてこんな良い人が、私のことを好きになってくれたのかわからない。


「苗は、飾らないから。純粋で、いつも一生懸命で、一緒にいると癒やされた。俺の過去も洗われる気がした」


「過去・・・・・・?」


 そう言って大和くんは少し悲しそうな表情をしていた。


 こんなに悲しそうな顔は見たことがなかった。


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