女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「胸元がVなのは、少し目のやり場に困るけどな」

 胸元を手で隠すと、頭にキスを落とされた。

「本心で思ってる。綺麗だよ」

 優しい声色に、胸がキュンと鳴き、誤魔化すように遥は不平をこぼす。

「でも、せっかく一緒に服を買うのなら、もっと一緒に選びたかったです」

「それは勘弁してくれ。今の俺には、あれが精一杯だ」

「だって、次から次へと決められて」

「照れが出る前に、済ませたかったんだよ」

 不満げな声を聞いて顔を上げると、居心地の悪そうな晶と目が合った。

「明日、誕生日で」

「ああ。知ってる」

「だから、ですか?」

「まあ、そんなとこ」

 素っ気ない晶に、フッと笑みをこぼした。

「やっと笑ったな」

 表情を和らげる晶に、ドキリとする。

「アキは改めて、かっこよくて、なんだか狡いです」

 いつものスーツは、もちろん似合っている。
 家でもスーツで、スーツ以外はパジャマしか見ない。

 それなのに、今はカジュアルな格好をして、それが悔しいくらいに似合っている。
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