女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「歳の差が1つでも縮んでいるうちに結婚してしまわないか」
「え……」
それはまるで「朝食、冷めないうちに食べてしまわないか」と促されるのと変わらないなにげない行動のひとつに思えた。
「休日でも受理してくれる役所もある。遥の誕生日なら結婚記念日も忘れないだろ」
「け、結婚記念日って」
「どうせ似合わないとでも言うんだろ」
不貞腐れた声を聞いても、ひとつも笑えない。
「行くのが恥ずかしいのなら、俺が出してきてやる」
「そんな、お醤油切らしてたから買ってきてやるっていうくらいのトーンで言われても」
「じゃ、なんだ。夜景の見えるラグジュアリーな場所で跪いて愛を囁けって?」
不服そうに訴える晶に笑う。
「だってアキ「なにを考えているんだって、突き返してくれて構わない」って言ってましたよ」
「突き返すのか」
「いえ。そういうわけじゃ」
晶は自分にとって、なにものにも代えがたい存在で、大切で、ずっとそばにいたい。
けれど、それならば『結婚』すればいい。とは思えなかった。
遥に『結婚』の二文字は重くのし掛かる。
家族には憧れがある。
その反面、不安でもあった。