女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「アキは過保護だからって、直樹さんが」
「過保護って、なんだよ」
「他の男に触れさせるより、遥ちゃんに仕事させない方を選ぶだろうなあって、仰って」
「直樹のやつ」
「でも、私は、いつまでもアキに生活まで全部、甘えているのは嫌だったので」
遥には、遥の世界を広げて行った方がいい。
自分とだけの、狭い世界だけでなく。
それはわかっているのに。
一瞬だけ見えた、遥の手の上に置かれた男の手。
遥は今後も、そういう場面に幾度となく出会うかもしれない。
そう思うだけで、嫉妬に狂いそうだった。
「ごめんなさい。長い時間。アキ、仕事がまだあるのに」
「ああ。そうだな」
離したくない体を無理矢理引き剥がし、遥の頭に手を置いた。
「もう、平気か? ダメそうなら、遠慮せずに電話しろよ」
「はい。ありがとうございます」
「じゃ、戻るわ」
遥に背を向け、ドアを開けた。
キスしたかった。
けれど、してしまったら、なにもかもを放り出して遥に触れてしまいたくなる。
「いってらっしゃい、ませ」
「ああ、行ってくる」
背中で遥の声を聞いて、外へ出た。