女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 遥はと言えば、固まって、熱心に正社員になろうよって、誘ってくる作業長の言葉が耳をすり抜けていた。

 直樹との練習のお陰か、大きな拒否反応は出ずに済んだ。
 晶があの時、踏み込んで来なくても、何事もなくミーティングを終えられただろう。

 気さくそうな作業長だ。
「つい熱が入って、ごめんね」と、謝ってくれたかもしれない。

 けれど、晶が部屋まで迎えに来てくれた。
 それがすごく嬉しかった。
 ホッとして、すぐに抱きついてしまいたかった。

 それなのに『保護者代わり』と名乗る晶の言葉が、冷たく胸に刺さる。

『恋人』とは、言われない。
 あくまでも『保護者代わり』なのだと思うと、寂しくなった。
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