Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
Betelgeuse




第一印象、真面目。





「50円のお釣りでーす。ありがとうございましたー」



切れそうなコンドームをコンビニで買って自動ドアを出、雑踏な道路へと足を踏み出す。


ただでさえ人が多く息苦しい東京なのにここぞとばかりに人が集まり、少子化と言われている日本にもこんなに若者が居るじゃないかと錯覚する。


うるさい雑音に混じる警笛、どこまでが道路なのかを見失った人々に拡声器で注意を呼び掛ける警官達。


そんな声など聞いていない、色覚が混乱しそうな衣装に身を包んで自分の声を通すことだけに必死な若者達。


そう、今日はハロウィン。

毎年のように暴動が報道される、秩序が跡形も無く崩れ去る日。
秩序なんて、普段でさえギリギリで保たれているというのに。



“ハロウィン”でもなんでもない、ただのストレス発散の為に渋谷区に至っては1億もの金を掛けて規制に努めているらしい。



そんなことに予算を使うくらいなら今日は外出を全て禁止にして、そのお金で婉曲的すぎる性教育をもっと徹底的にしたら良いのにとさえ思う。



そんな過激的なことに思考を至らせながら、私は人混みを厭うように自宅への帰路に就くはず……だった。




ところが、2歩目が硬いアスファルトを感じる前に不意打ちの衝撃によって私の体は大きく横へ倒された。



「ったー……」



あまり強くぶつかった自覚は無かったのだけど大分派手にコケてしまい、袋の中のお洒落なパッケージのそれが放り出される。



「うわ、ごめん。大丈夫? ……はい、これ。落としたよ」



私とぶつかった人は全くよろけもせずに放り出されたそれをサッと拾い、私を立たせる。そしてハンカチでも拾ったかのように爽やかな顔でそれを私に手渡した。


あまりにも爽やか過ぎて笑い出しそうなのを堪えるのが大変なほど。



「ありがと……」


「ねえ、時間あるならお茶しない?」


「え」



彼は私がお礼を言い終わる前に唐突にそう誘う。



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