もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
恭は私の頭を自分の肩に乗せてくれた。

目を閉じたまま恭のぬくもりを感じて私は思いだしていた。

海に向かい歩みを進めた私を、引き寄せて恭が私に言ってくれた言葉。

『笑わなくていい。話さなくたっていい。何もしなくたっていい。つらいなら泣けばいい。でも、命だけは投げ出すな。命だけは捨てんな。頼むから。』


恭と出会っていなかったら、今の私はいない。

消えてなくなっていた。

私は恭に気づかれないようにそっと流れた涙を拭った。
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