死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。


「お邪魔します」
 三人で声を揃えてそう言い、靴を脱いでおずおずと部屋の中に足を踏み入れる。

 玄関を抜けてすぐのとこにはキッチンダイニングがあり、そこの家具は黒と白を基調としていた。
 キッチンダイニングの中央あたりに、階段があった。
 どうやら、メゾネットタイプのアパートみたいだ。
 普通のアパートじゃないとこが金持ちの潤らしいよな。

「一人暮らしなのになんで二階があるんだよ?」
 あづが階段を見ながら首を傾げる。

「たまに執事とか来るから。俺が風邪ひいてる時とかに世話しに来て、そのまま何日か様子見のために泊まってくれんだよ」

「俺はそんなことされたこともないのに。母さん仕事してばかりだし」
 顔を伏せて、小声であづは言う。
 俺達は何も言わず、あづを見つめた。
 多分これは、独白に近い。
 きっと聞かせたくて言ったんじゃなくて、無意識のうちに出てしまったんだろう。潤の環境と自分の環境の違いに苛立ちを感じて。
 そして多分、仕事ばかりというのは事実だが、穂稀先生があづの世話をしないのは、虐待の一環だ。
 それに、あづが喧嘩をする前から負っていた怪我も。

 俺達は何も言わず、あづを見つめた。

 多分これは、独白に近い。

 きっと聞かせたくて言ったんじゃなくて、無意識のうちに出てしまったんだろう。潤の環境と自分の環境の違いに苛立ちを感じて。
 そして多分、仕事ばっかというのは事実だが、穂稀先生があづの世話をしないのは、虐待の一環だ。
 それに、あづが喧嘩をする前から負ってた怪我も。

「あづ、先生と喧嘩した?」
 真っ赤に腫れてるあづの耳を一瞥する。草加達と喧嘩をしたせいなのか、あづの耳はコンビニにいた時よりさらに赤くなっていた。

「うん。……喧嘩はした」

 喧嘩をした理由は、言ってくれないんだな。それに、どんな喧嘩だったかも言う気はないらしい。

「そっか。潤、洗面所どこ? あづの傷洗いたいんだけど」
「ああ、こっち」

「洗うのは自分でする。お前らはテレビでも見てろよ」
 洗面所に着いてすぐに、あづが俺達を見つめて言った。

 多分俺らが洗うのを手伝ったら、今日してた怪我以外にもたくさんの傷や痣があるのがバレるからだろうな。どうやら警察と同様に、俺達にも虐待の傷は見せたくないらしい。もう耳と腕と唇の怪我は見たし、全部見てもそんな変わらない気がするんだけどな。ま、きっとあづの気持ちの問題なんだろう。

「りょーかい。タオルはこれ使って」
 潤が洗面台の隣にある細長い棚からタオルを取りだして、あづに渡す。
「うん、ありがと」
 そう言うと、あづはタオルを肩にかけて、包帯を外し始めた。
「終わったらダイニングな」
「うん」
 俺は自分の言葉にあづが頷いたのを確認してから、潤と恵美と一緒に洗面所を出た。

< 117 / 170 >

この作品をシェア

pagetop