恋って西洋風グミの味?

放課後

放課後、パラパラと教室に人はいるけれど、受験生もいる高校三年生の教室は結構閑散としている。
あたしの友達もみんな帰ってしまった。
「神菜、かえろーよぉ」
と言われたけれど、さすがに昼間のことがあったので今日はパス。

ああ、大槻のために友達をパスするってどうなの、それ?


…でも、どんな話なのか気になるし。

てゆーかたぶんたちの悪い言い訳聞かされるんだろうけどね。

一緒に帰るのはまずいし、大槻は今日もバイトかもしれないし、放課後の教室なら人も少ないし好都合だよ。

って教室を見まわしてみると、壁際の席におかっぱの女の子。


…松下さん…?

ぎょっとして松下さんのほうを見てしまったら、偶然目が合ってしまった。
ニッコリと突き刺すような視線をあたしに投げかけている。

ちょちょちょ、真剣に怖いんですけどっ!!!

別に大槻君が言ったから待ってるんだからね?
あたしが好きで待ってるわけじゃないんだからね?
そこらへん勘違いしないでよ、松下さん!!!

松下さんは分厚い本を手にしながら、大槻のほうを眺めてた。
大槻は、教科書とかをのろのろと鞄にしまうと、ふいに顔をあげて、あたしのほうをみた。

その時、ケータイが鳴った。


ピルルルルルル


え?誰?

大槻からメールじゃん。

「今から話あるから、そっち行くぞ」

という簡単な文章。

同じ教室にいるのにこの宣戦布告、ちょっとおもしろい。
でも大槻はそれくらい教室では誰とも話さないし、あたしと大槻が実は話すようになってるとか誰も知らないし。

大槻がこっちに向かおうとして、椅子を立ったとたん、松下さんが大きな声で言った。

「優喜君、一緒に帰ろ!」

閑散としてるとはいえ、まだクラスに何人かは残ってて、その何人かが一斉に大槻と松下さんのほうを見た。

えっ…そう来る…?

「え、おい、大槻って松下とできてたの?」

なんてうわさ好きの男の子が言っている。

みんな知らない事実。あたしも知らなかったしね。

松下さんはニコニコ笑って、分厚い本を抱えながら大槻の横にいつの間にか待機していた。
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