俺様社長は溺愛本能を隠さない


──印刷機のインクと除菌シートなどの消耗品を購入した後、オフィスへ戻った。

ちょうどモイストアメニティの担当者が玄関から帰っていくのが見えたが、間が悪いため私は隠れて少し待っていた。

都筑さんと若林君は担当者を見送った後、ドアが開いたまま会話をしている。

「すごいですね、社長。ラフ案も絶賛でしたし。前の会社の取引先だったって驚きました。社長目当てでこっちに乗り換えたってことですよね」

「親会社はまだ向こうの取引先だ。モイストアメニティは新規ブランドだから試しにこっちに持ってきてくれたんだろ。俺だと無理矢理引き抜いて喧嘩になるところだが、こういう交渉は有村が上手いんだ」

「……で、社長。その有村さんと何があったんですか。気まずいから出掛けてるんですよね」

げ、若林君てば……!

ホームセンターの袋が音を立てないよう、私は引き続き息を潜めた。

気まずいから出掛けたというのは誤解だが、気まずいことには間違いない。
都筑さん余計なこと言いませんように……。

「好きだって言っただけだ。そしたら避けられてる」

ああもう、ど直球で……。

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