俺様社長は溺愛本能を隠さない


──熱を冷ましてから二人でオフィスに戻った。

付き合っていることは、もう少し時間を置いてから皆に話すことにした。
別にすぐ言ってもいいんだけど、少し恥ずかしいのだ。
都筑さんも私のタイミングで、と珍しく尊重してくれた。

戻ってみると桃木さんはへそを曲げていて、私にしつこく「何話してたんですか」と皆には聞こえないよう小声で尋ねてくる。

でももう痛くも痒くもない。
きちんと彼女という立場になったのは私、桃木さんが横恋慕をしているだけなのだ。

「……怪しいです。絶対何かありましたよね、莉央さん」

スケジュール管理の仕方を教えている最中だというのに、さっきから全く集中してくれない。
なんで都筑さんは桃木さんを秘書に選んだんだか。

そういえば、新しい秘書を雇った理由を聞くのをすっかり忘れていた。
二人きりになったときに聞けば良かったのに、キスに夢中で、つい。

キス、すごかったな……。

「莉央さぁん。聞いてますぅ?」

ひらひらと目の前で手を振られるが、私は頭がぼうっとして相手にできない。

そんな私に見かねてか、桃木さんはため息をついた。

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