イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

『美弥子? やっぱりまだ店にいたんだな』

「う、うん……」

『いくら待っても無駄だから、もう帰れ』

追い払うみたいな言い方に、胸が痛くなった。
やっぱり彼はもう……

「ねえ、今日が何の日か覚えてる?」

恐る恐る聞くと、電話の向こうで彼が息を飲み、怯んだ気配がした。

『っ、あぁ、……トライアルの、ラストだろ』

覚えてたんだ。
その声のトーンじゃ、喜んでいいのかどうかわからないけど。

「わたしの返事、聞きたくない?」

こっちが精一杯明るく装えば装うほど、温度差がくっきり際立つようで居たたまれず、ついに口を噤んでしまった。

「……」

2人の間に沈黙が落ちて。
通話が切れてしまったんじゃないかと心配になり、話しかけようとして――


『ごめん』
彼の声が聞こえた。


『オレの勝手で振り回して悪かった。……もう、終わりにしなくちゃな』


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