イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「いや、いないよ。お姉さんも、妹もね」

はい、撃沈。
速攻か。へこむな。

親しい年上の女性、それならもしや、と思ったけど……まぁそうだよね。
彼からそんな話、聞いたことないし。

苦笑したわたしは、フォークを再び動かし始めた。



カルボナーラを食べ終わる頃、流さんが他のお客さんと音楽のセッションを始めた。
店内を満たす心地よいジャズに耳を傾けながら、それでも時折ドアの開く気配がすれば敏感に反応してしまう。
もちろん、坂田くんであるはずがない。

行けないって言ってたじゃない。
それでも待ってしまうわたしも、大概だな。

時間は10時過ぎ――そろそろ帰ろうか。

スツールに糊付けされてしまった重たいお尻を持ち上げようと、カウンターに手をついた。
そこへ。

「中村様、お電話が入っております」

顔なじみのスタッフが、子機を持ってきた。

手を伸ばしながらも、「わたし、ですか?」って首をひねる。お店あてに、なんて一体誰が……

「坂田様からです」

「え」

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