イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
もう営業時間を過ぎてるんだろう。
小さめのスポットライトに照らし出されたショーウィンドー、その一着だけが白く無垢な光に包まれている。
「きれー……」
レースをたっぷり使ったボリューミーなスカートが目を惹く、プリンセスラインのウェディングドレス。
夢見てた。
ああいうふわふわの、王道ドレスを着る日を。
その日だけは、平凡なわたしだって誰もが振り向くお姫様になれる、そんな気がして。
もっと、単純だと思ってた。
出会って愛し合って、そうしたらその先は必ずバージンロードにつながってるって信じてた。
なんておめでたいお子様だったんだろう。
ドレスの輪郭が、ふと曖昧になって。
視界が、薄いヴェールで覆ったようにぼやけていく。
あっという間にぐしょ濡れになる頬を、ぬぐうことも忘れて。
ただただ、ドレスを見上げて立ち尽くした。
「う、っぇ……っく……」
しゃくりあげて、また新しい涙があふれて……