イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

眠そうな顔でモニターを見上げていた近藤さんが、「あぁ、中村さん」と身体を起こした。

「坂田には注意しておきましたので、そろそろ撤収すると思います」

「ほんとにすまなかったねえ。あ、ちょっと待ってて。今、タクシー呼ぶから」
「いえ、大丈夫ですよ? わたし、自分で……」

通りに出れば空車があるだろう、と断ると、皺だらけの顔がわかりやすく曇った。

「いや……怖がらせるつもりはないんだが……さっきから変な男がビルの周りうろついててね。同僚と、警察に通報した方がいいんじゃないかって、話してたところなんだよ」
「変な男?」

手招きされるまま、わたしは中へ。
ずらりと並ぶ小型のモニターが映してるのは、ビルの各所に設置された防犯カメラの映像だろう。

「一番右の、上のやつ見てごらん。すらっとした男が映ってるだろう? 植木の影に」
「……あぁ、はい」

近藤さんの言う通りだった。
正面玄関の外と思われる場所に細身の男が一人、何をするともなしに立っていた。

纏っているのはシルバーのロング丈コートで、光沢のある素材が画面越しにもよくわかる。しかもファー付き?
なんか……サラリーマンっぽくないファッションだな。

「さっき声をかけようとしたら、一旦逃げちゃったんだけど。でもまた戻ってきたみたいで。その時にチラッとコートの下の首回りが見えちゃってさ。なんと彫りモンがあったんだよ、びっくりしたなぁ」

彫りモン? タトゥーってこと?

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