イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「エリートなイケメン?」

まるで坂田くんとのこと知ってるみたいな口ぶりだ。
昨日はただの同期だって、紹介しただけだよね?

不審に思って顔をあげれば、途端に小さな目が気まずそうに泳いだ。
「あ、えと……すみません、椎名さんから聞いてしまいました」
「え、恵美から?」

彼女にも何も言ってないけど……研修期間中に情報収集したってことだろうか。
さすがだな。

「でもあの、諦めません。外見じゃ叶わないかもしれないけど、僕のことをもっと知っていただければ、中村さんの気持ちも動くかもしれませんし」

「いや、えっと――」
「ですから、また誘わせてください。では、お仕事頑張って」

反駁を遮る様に、思いがけない程強い口調で言って踵を返す河合さん。
わたしはただ、無言で見送ることしかできなかった。

シャカシャカ足早に去っていく後姿へ、ため息をつく。

悪い人、じゃないんだよね。
だからなんとなく、強く断れない。

あんなに熱心に言ってくれるのに気持ちが全く動かなくて、なんだか申し訳ないような気すらしちゃって……


「おはよう、中村さん」

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