イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
念のため今夜は入院することになったしのぶさんを残し、わたしたち3人は病室を後にした。
エントランスから外へ出ると、もうすっかり日が暮れている。
「お袋、初めて泣いたな」
歩調を合わせて歩き出したところで、坂田くんがそんなことを言った。
「うん、そうだね」
ほんとによかったと笑顔で頷いて――、彼の足が止まっていることに気づき、振り返る。
「どうしたの?」
「……美弥子がいてくれて、よかった」
真摯な眼差しで見つめられ、気恥ずかしくて慌てて首を振る。
「そんなっ、わたしは何もしてないよ」
「あの時」
「あの、時?」
おうむ返しに尋ねると、彼は自嘲気味に視線を落とした。
「倒れてるお袋を見た時。一瞬、動けなかった。身体が動かなかった」
「びっくりしちゃっただけでしょ。そんなの当たり前じゃない?」
わざと明るく言って覗き込むんだけど、切れ長の瞳は苦し気な色を滲ませたままだ。
「違う……。あの時オレは、英二と同じことを考えてた。自殺だって。そしてその後一瞬、ほんの一瞬だけど、このまま願いを叶えてやった方がいいのかもしれないって考えが、頭によぎったんだ」
眉を寄せ、吐き出すように言う彼は、見ているこちらが辛くなるほど、悲しい顔をしていた。