イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「ケンカもたくさんしたけど……必ず彼がね、これのフタ、カチャカチャやりながら近づいてくるの。それが、仲直りしようって合図。笑っちゃうでしょ? いっつも子どもみたいに意地っ張りで、不器用で……口下手、でっ……」

ぽたぽた、ぽたっ……

押し殺した嗚咽が、病室に響き渡る。

たまらなくなって、濡れたその手を握ると、華奢なその身体がぶつかるようにしがみついてきた。


「、……ぅっ……ひ……しゅうすけぇ……」


すすり泣きが、号泣へ、慟哭へ。
変わるのに時間はかからなかった。


わたしは、どれだけ伝えてきただろう?
寂しいって、辛いって――あの人たちに。

何を言っても無駄だって決めつけて先に背を向けたのは、わたしじゃなかっただろうか。

伝えたい時に、必ずしもその人がそこにいるとは限らない。

たとえそれが、愚痴であっても。
ぶつけたい時に、ぶつけられる時に、ぶつけておくべきなんだ。


今年の夏は……実家に帰ろうかな。
ふと、そんなことを考えた。

< 493 / 539 >

この作品をシェア

pagetop