イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「うーん、カレーを褒められてもねえ」
複雑そうな顔のママを、まぁまぁとパパがなだめて。

「一昨日はチキンカレーだったから、今日は別のカレーにすれば?」
「あ、いいわね。野菜カレーにして、ニンジンいっぱい入れちゃおうかな?」

「え!」
ギョギョッて。
わかりやすく顔を引きつらせる男の子。

顔を見合わせたパパママが、ぷぷって吹き出す。
つられて男の子もケラケラ笑い出して――……


……いいなぁ、楽しそう。

こっそり耳をそばだてちゃいながら。
微笑ましいやりとりに、心がじんわり満たされていく。

瞬く間に、うちもカレーにしよ、と翻意していた。
そうして手に取った豚の角切り肉へ――目を落とす。


「お母さんの、カレー……か」


あの人の得意料理って、なんだっけ。


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