イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

マイバックを片手に駅前のスーパーから出たわたしは、馴染んだ道をたどって歩き出した。

東京都足立区、綾瀬駅――ここが、実家を出て以来わたしの“地元”だ。
アパートは駅から徒歩5分だし、周りには昔ながらの商店街もあったりして、結構便利で気に入ってる。

就職の時ちょっと背伸びして、1LDKに引っ越した時も、やっぱりここから離れられなかったくらい。

ただ、通勤を始めてから、乗り換えがちょっと面倒にはなってきた。
もっと会社の近くに住もうか、と何度も思ったけど、なかなかこれっていう物件がなくて……都内の駅近はどこも、家賃高いしなぁ。

そのまま視線だけを上向ければ。
夜空をバックに、大小さまざまなビルやマンションのデコボコが目に入る。

坂田くん、ほんとにタワマンに住んでるのかな。

経理じゃないから具体的な額はわからないけど、営業はインセンティブが相当つくって噂だし。
スーツだってカバンだって彼、いつも上質っぽいもの選んでるしな。
タワマンは無理でも、近いところまでいってそうだ。

まぁわたしには関係ないけど。
肩をすくめて目を戻し、てくてくと足を運ぶ。

別に、タワマンがいけないなんていうつもりはない。
でもさ……とため息交じりに思い出すのは、さっき店内で見かけた親子の姿だ。

わたしが欲しいのはタワマンライフじゃなく、あんな家族。
一緒に他愛もないことで笑い合える、そんな家族だから。

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