宇佐美くんの口封じ




「ここまで来て見つかったらどうします?」

「…んー…見つかることあるかな…」

「や、ないと思うけど。例えばの話」

「…もう1回逃げる?」

「ベランダから飛び降りるとか?」

「えぇ!そうなったら宇佐美くんだけ逃げてよ!」

「えーそれはダメ。もう俺とせんぱいは共犯だから」

「か、勝手に巻き込んだのは宇佐美くんだよ…!」

「でも一緒に逃げたし隠れたじゃないですかー」

「……それは…そうだけど…」

「共犯っていーですね。せんぱいと2人で悪いことしてる気分」

「なに、言って…」






って。本当、なんの話をしてるんだ。


こんなところ多分…いや、絶対追いかけてこないし。
むしろ来たら本当に怖いし。



ふと腕時計を見て、リコと麻央ちゃんと別れて随分時間が経っていたことに気づいた。



「私…そろそろ戻ろうかな、」

「あ。すいません巻き込んで」

「いいよ全然。…それじゃ、気をつけて、ね」




女の子に捕まって"食われないように"気をつけて。




「また後夜祭で、」

「…うん」



少しの名残惜しさを残して、私たちは教室を出た。







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