宇佐美くんの口封じ




「せんぱいが今俺を好きならいいけど、」

「う、」

「…少し、結構、……嫌でした」





ふいっと視線を逸らしそう呟いた彼。

相変わらず空気を読まずに輝き続けている花火が、宇佐美くんの拗ねた顔を照らした。



「あの、宇佐美くん。あれは誤解でして」

「誤解?」

「あれは宇佐美くんのことが、その、……す、好きだって言っていたときで」


宇佐美くんが唖然としている。
嘘だろ?と言わんばかりの表情だ。



「私が不運なばっかりに宇佐美くんが来たタイミングが良くなかっだけかと……」




いや、本当に。
なんで私はこんなに不運なんだ。

私がもっと運の良い人間だったら、こんなに悩まずに済んだ可能性もあったんじゃないか。


そう思うと、謝ることじゃないにしても謝りたくなってしまう。不運な女でごめんなさい。


< 230 / 234 >

この作品をシェア

pagetop