終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
契約してみる?
「律兎くん。彼女が今回のデザイナー。初仕事の新人さんよ」
スタジオの隅で監督に紹介された子はさっき俺にぶつかってきたあの美少女だった。
「榎本結です。よろしくお願いします」
「白川律兎です。よろしくお願いします」
営業スマイルを向けるけど少し目を合わすとフッと目をそらされた。
「それでは採寸始めます」
「はい、お願いします」
上着を脱いで姿勢を正した。
メジャーを手に真剣に測る彼女の顔をじっと目で追った。
さっきの超絶美少女は俺の手を取らず近くの眼鏡を拾い装着するとものすごい勢いでその場を走り去っていった。
まさかデザイナーだとは思わなかったから数秒後にスタジオで再会してびっくり。
彼女の方が驚いてたけど。
しかし、なんなんだこの牛乳瓶の底みたいな丸い眼鏡。
めちゃくちゃダサい。
それに覇気がないし常に伏し目がちでこっちまで気分が暗くなる。
いくら顔が可愛くてもこれじゃ…。
「あの」
「はい?」
「さっきはすみませんでした。急にぶつかったのにお詫びもしないで」
「いえ、僕もよく見てなかったので…」
じっと上目遣いで見つめられる。
「あの、何か?」
「…すみません、ちょっと座ってもらってもいいですか?」
言われるがままイスに座る。
「失礼します」
そう言うと、彼女は俺の顔を両手で挟み込んだ。
そしてグッと顔を近づけてくる。
「ちょっ…」
吐息がかかる距離で止まりジッと目を覗き込む。
「すみません、暗くて目の色が分からないんです。明るいところで確認してもいいですか?」
「あ、はい」
目の色見てたのか、びっくりした。
丸眼鏡かけてるとはいえあの顔に見つめられるとドキドキする。
しかし、デザイナーにもいろいろいるけど彼女は職人タイプだな…全然雑談をしようとしない。
俺は基本喋って欲しいタイプだけど、この子みたいなタイプは会話のキャッチボールはできそうにない。
無理して喋らせてもかわいそうだしこのままされるがまま待っていよう。