傘を差して雨宿り
「いや、つづきって言うか、他の聞き間違いの話なんですけどね」

「山程聞き間違ってそうだな、お前……」

 いやいや、と手を振った莉帆は、
「まあ、これは私の話じゃないんですが。

 従姉の子が、学校で今日、『食肉野菜』って曲を聴いたって言うんで、そんな曲あったかなーって考えてたんですけど。

 謝肉祭じゃないですかね?」
と言う。

「……お前、親戚もそんなのばっかりか」

「いえ、そういうわけじゃ……、いてっ」

 莉帆がおのれの傘に足をひっかけたのを見て、蒼羽が言ってきた。

「邪魔そうだな。
 貸せっ、傘!」

「ええっ?
 今ですかっ?」

 さっき、言って欲しかったのにーっ、と莉帆は叫ぶ。

 二人で歩く雨上がりのオフィス街。

 ビルの向こうに、うっすら虹が浮かんで見えた――。



                        完



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