傘を差して雨宿り
 莉帆がスマホを取り出そうとすると、蒼羽は大きな手でそれを抑え、
「口で言え」
と言ってくる。

 いや、貴方もですよ、と思いながら、莉帆は蒼羽を見上げて言った。

「用事、ありません」

 二人並んで歩き出す。

「……間が持てないから、さっきのしょうもない話のつづきでもしろ」

 そう蒼羽が言ってきた。

「どれですか?
 ゴキブリが何故死んだのかですか?

 二十四時間サスペンスですか?

 交差点に立つご老人ですか?」

「とりあえず、交差点はないな」
と言った蒼羽に、

「ノーモアならつづきありますよ」
と莉帆は言った。
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