空を見上げて雲は宙を舞う。

「何…?」

多分その子の名前は山添 珠希、だった様な気がする。
パッと見た感じでは何も感じないけど私には分かる。

……いじめだ。集団無視だろう。
山添さんが一人、席に座って泣きそうな顔をして俯いている。
周りの人はヒソヒソと山添さんの方を見ながら何かを言っていた。
異様な空気が教室を包み込んで。


「栞?どうしたの、入らないの?」

日菜子が後ろから私の顔を覗き込んで来る。
返答しようと口を開く、が。


「ねぇ、相良さん、滝沢さんも。ちょっと聞いて。」

教室から姿を現した誰かに遮られた。
金髪の髪をカールに巻いたセミロングの彼女。
多分、何処かで聞いただけだから本当とは言えないけど噂ではお金持ちの良いとこのお嬢様らしい。
彼女の名は確か、姫戸 莉音。
いわゆるクラスのお嬢様的な人だと思う。

「姫戸…さん?何?」

少し嫌な予感がしつつも無理やり笑顔を浮かべる。
凄いひきつり笑顔になってるかも。ヤバいかな。

でも幸い、姫戸さんはそれに気が付かず不自然なくらいの笑顔で笑いかけてくる。

「…私も今日聞いたんだけどね、山添さんって昨日万引きしてコンビニの店員に止められてたんだって。
やばくない?二人も、あんな子と仲良くしない方がいいよ。」

「あ……うんありがとう」

「うん!よろしくね〜」

そう言って姫戸さんはまた教室の方へと金髪を揺らしながら掛けて行った。

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