心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「まりえ。俺が 最初に告白した日のこと 覚えてる?」

車の中で 私達は 色々 話す。

向かい合わないから 恥ずかしくないし。

純也は 前を向いたまま チラチラ 私を見る。


「うん。覚えてるよ。峰岸さんの 打合せが 終った時。」

コーディネーターの仕事を 始めて

最初に 1人で担当したお客さん。


純也は 峰岸さんの 子供と遊びながら

打合せの間中 近くにいてくれた。


「まりえ すごく一生懸命 やってたよね。」

「初めての お客さんだったから。緊張が ハンパなかったよ。純也 やんちゃ坊主達の面倒 ずっと見ててくれたよね。」

「あの子達 2人共 もう小学生だよ。」

「そうなの?だって 下の子 まだオムツしてたんだよ?」

「早いよね。子供の成長って。たまに 顔出すけど。すっかり お兄ちゃんになったよ。」

「えっ?今でも 行くの?」

「たまにね。近くまで行った時とか。」


もう4年も前の お客さんなのに。

純也は 担当したお客さんを 売りっ放しにしない。

だから 紹介のお客さんが 多いんだ。


「純也って 偉いね。引渡しの後も お客さんを 大事にするんだね。」

「俺を信用して 高い買い物 決めてくれた人だもん。大事にしないとね。」


だから 私のことも 大事にしてくれる。

付き合う前より ずっと。


だから私も どんどん 純也を好きになる。

付き合う前より ずっと。





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