心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
両親が揃った 普通の家庭に 生まれ。
特別 裕福では ないけれど
食に困るほど 貧しくもなく。
望むままに 教育を受けることもできて。
こんなに 愛されて 育ったのに。
小さな躓きを 乗り越えられずに
心を閉ざして しまった時間。
進むことも 戻ることも できなくて。
世界中に 自分の居場所なんて
どこにもないって 本気で 思っていた。
でも 純也は ゆっくりと
私の心を ほどいてくれた。
グチャグチャに 絡まった心を。
一つずつ 丁寧に…
私は 本当に 幸せだって
純也に 出会えたから 思える。
これからは この幸せを 分けていこう。
純也の両親に 私の両親に
これから 生まれる子供達に。
ずっと 純也を信じて。
すれ違うことが あったら 納得ゆくまで 話し合って。
いつか 子供達に 理想の夫婦って 言われるように。
今 心に満ちる 感動を 忘れることなく…
「そろそろ お時間です。」
控室のドアが開き 係の人が 呼びにくる。
先に 教会に移動する 純也に 小さく頷き。
私は 父の手を取り 立ち上がる。
~end


