心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

翌日 更衣室に入ると 先に来ていた あゆみさんが

「麻里絵ちゃん。祐一君 何かあったの?」

と私に 問いかける。

「えっ?どうして…」

それを 聞きたいのは 私の方なのに。


「麻里絵ちゃん 知らないの?祐一君 バイト辞めるって。」

「嘘!」

私の心臓は 跳ねあがる。


「どうして?」

驚いた私に あゆみさんは もっと驚いている。

「祐一君 昨日 店に来て。今日で辞めるって言って。荷物も 全部 持って帰ったよ。」

私は 体が震えだし 両手を強く握る。

「私。昨日 突然 別れようって ラインが来て。何が何だか 全然 わかんなくて。」

私は 途切れ途切れに それだけ言う。

「ちょっと。麻里絵ちゃん 大丈夫?真っ青だよ。」

あゆみさんは 私を 椅子に座らせてくれた。


私は ただ俯いて 震えていた。

「2人に 何かあったの?」

あゆみさんに 聞かれて 私は 首を振る。

「田舎に帰る時も 東京駅まで 送ってくれて。帰りも 迎えにくるって言ったのに。突然 連絡つかなくなって。それで 別れようって。」

私は 震える声で あゆみさんに話す。


私が おかしいの?

あゆみさんなら 何か わかる?


「麻里絵ちゃん。仕事できる?今日は このまま 帰った方が いいんじゃない?」

私を 心配そうに 覗き込んで あゆみさんは聞く。

「大丈夫です。部屋に 1人でいたくないから。」

私は 首を振って 立ち上がる。


「麻里絵ちゃん…」


あゆみさんの声が 耳の奥で 反響して。

そのまま 私は 気を失った。




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