心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「私 大学生になってすぐに ファミレスで バイトを 始めたの。そこで 一緒にバイトしていた子と 付き合うようになって。」

話し始めてすぐに スープが運ばれてきた。

「麻里絵ちゃん 食べながら ゆっくり話そう。」


田辺さんの言葉に 私は頷く。

スプーンを取って 微笑み合う。

温かいスープは 気持ちを落ち着けてくれる。


「私にとって 初めての恋人だったの。何もかも 初めて。喧嘩したこともあったけど。上手くいっていたわ。1年付き合って。夏休み 帰省する私を 彼は ホームまで 見送ってくれて。帰りも 迎えに来るって言ったのに。それっきり 連絡が つかなくなったの。」


田辺さんは「うん」と 相槌を打って 静かに 聞いていた。


丁寧に 運ばれてくる料理を ゆっくり食べて。


話すことは 辛いと思っていたけど。

私は 料理を味わうほど 余裕があった。


私の長い話しが 終わる頃 デザートになって。

「わぁ。美味しそう。」

と私は 歓声を上げる。


田辺さんは 私の話しについて 何も言わない。

同情や 慰めの言葉を聞いたら きっと私は 辛くなる。


自分のデザートを そっと私に 差し出して

「俺のも 食べていいよ。」

と優しく言った。



 
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