心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「たいしたことじゃないの。昔 親友に恋人を奪られただけ…」

8年かけて 初めて口にした言葉。

私にとっては 大きな一歩。


じっと 見つめていた目を そっと伏せる。


「たいしたことだろう」

田辺さんの 驚いた声に 顔を上げる。

熱い目に 捉えられて 目を逸らせない私。


「詳しい話し 聞かせて。麻里絵ちゃんが 辛かったら 無理しなくていいけど。」

田辺さんは すっと目を細めて 優しく微笑む。


思ったより 落ち着いている自分を 確認して

「聞いてもらえる?誰にも 話したことがないから。上手く言えるかどうか わからないけど。」

私は 踏み出した一歩を その先へ 進めてみようと思う。


「うん。辛くなったら 止めていいからね。」

田辺さんの 優しい言葉に 笑顔を作ったけど。

きっと私の顔は 不自然に 歪んだだけだった。




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