心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
そっと 純也に肩を押されて 展示室を出て。
「すごく 感動しちゃった。」
照れ隠しに 肩をすくめる私。
「よかった。まりえに 喜んでもらえて。」
純也も 少し照れた顔で 微笑む。
「感動とか 喜ぶとか そういうレベルじゃなかった。なんかね。胸にズーンと響いて。こんなこと 初めてで。自分でも びっくりしちゃった。」
純也に促されて ティールームに落ち着き。
興奮して 饒舌な私を 純也は 優しく見つめる。
「まりえは 感受性が豊かなんだよ。ほら 音楽聴いても 泣いただろう?」
純也に そう言われて 私は ハッとする。
「純也のせい?」
私の言葉に 不思議そうな顔をする純也。
「純也のせいで 私の心 敏感に反応するのかも。」
今まで 私は こんなこと なかったから。
純也に 心を動かされて 全てに 敏感になっている。
前を向いた私の心は 真っ白な紙。
全てを 吸収してしまう。
「いいねぇ。まりえの体も 敏感かも。」
甘い瞳で 私をからかう純也。
頬を膨らませて 睨んだけれど。
本当に 私の全てが 敏感になっていた。
美術館を出た 森の木陰で
私は 純也の唇を 甘く 受け止めてしまった。