アテナ・イェーガー〜出会い、のちにキス〜
そうロネは言ったものの、少女は首をますます傾げるばかりだ。世間知らずというレベルではない。まさか、とロネは口を開く。

「この森でずっと暮らしているんですか?」

すると、少女は「そうだ」と頷く。この森は外部との関わりはゼロだ。何も知らなくて当然である。

「私の家は森の奥にある。ずっと一人で暮らしているんだ」

「どうして一人なんですか?家族は?」

「……知らない」

一瞬、悲しげな目を少女は見せた。ロネはこの先は聞いてはいけないのだとわかり、質問することをやめる。

「お前は何をしにここに来たんだ?」

少女が鋭い目でロネを睨み付けた。その目はまるで野生動物のように警戒で満ちている。引き返したはずの恐怖がまたロネの中に押し寄せてきた。

「お、俺はロネ・ガランテって言います!十七歳で学校に通ってて……。授業で使う薬草を取りに来ていたんです」

「……そうか。なら、さっさと薬草を取って早く帰れ」
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