男心と春の空
コンビニ
家を出ると決めた朝。

すべての荷物を突っ込んだ大きなキャリーケースを引いて最後に寄ったのはいつものコンビニだった。

「おお、はまちゃんじゃん。」

八重島が八重歯を光らせて言ってきた。

「どこ行くの、旅行?」

相変わらずゆっくりダルそうな口調。
そろそろ上がる時間なのかも。

「お父さんのとこ行ってくる。」

そう言うと、「ふうん」とだけ返ってきた。

俺は旅行用シャンプーと歯ブラシセットとタオルを入れてレジに出す。

「旅行なの?」

また聞いてくる。

「客の買う物いちいちチェックすんなよ。」

俺は笑って流した。
八重島がニヤニヤ笑う。

レシートと一緒に「ありがとうございましたー」と言う。

「じゃあなー。」

俺はそう言ってコンビニを出た。

これが島に来る前、最後の会話だった。

人生は何があるか分からない。
俺は八重島に人生で一番の感謝をすることになる。
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